こんにちは。TEDDY WORKS代表のオグマです。
第1回では、「再考築」という考え方について書きました。
今回は、その「再考築」が最初に形になった製品、懸垂バー「KENSUI」がどうやって生まれたのかを書きます。
先に言っておきます。
かっこいい話は、ほぼ出てきません。
出てくるのは、断られた話と、失敗した話。
持ち物:デッサン数枚。以上。
創業したとき、私の手元にあったのは製品のデッサンが数枚だけでした。
図面は描けない。金属加工の知識もない。作ったこともない。
あったのは、「床と天井で突っ張って固定する懸垂バーを作りたい」という気持ちだけ。
今思うと、よくそれで会社を作ったなと思います。
ただ、父が家具屋をやっていたこともあり、モノづくり自体には子どもの頃から触れていました。
そして、町工場が年々減っているという大田区の現状を知り、「せっかくなら、ここで作りたい」と思ってしまった。
思ってしまったので、大田区へ引っ越し、自宅で会社を始めました。
何十社に断られたか、もう数えていない
最初にやったのは、町工場への電話です。
電話帳を見ながら片っ端からかける。話を聞いてもらえそうなら訪問する。
訪問した帰り道に別の工場の看板を見つけたら、そのままアポなしで飛び込む。
そんなことを何十社と繰り返しました。
結果は、ほぼ全滅でした。
図面もない。実績もない。金属加工のことも分からない。
そんな人間が突然やってきて、「こういうものを作りたいんです」とデッサンを見せる。
相手にしてもらえないのは、当然です。
私が工場側だったら、たぶん同じ反応をします。
それでも当時は、かなり堪えました。
気持ちも体力も、正直かなり削られていました。
転機になったのは、金融機関の方に教えてもらった技術系の展示会です。
そこで出会った町工場の社長が、私の拙いデッサンと説明を、最後まで聞いてくれました。
そして、
「ぜひ形にしましょう」
と言ってくれました。
何十社に断られた後の、この一言です。
あの一言がなければ、KENSUIは存在していません。
垂直に立てたら、怖すぎた
作ることが決まって、めでたし。
とはなりませんでした。ここからが、また長かった。
床と天井で突っ張って固定する懸垂バーというものは、世の中にありませんでした。
参考にできる製品がない。つまり、正解がない。
とにかく作って、試して、ダメなら作り直す。それしかありませんでした。
中でも一番苦労したのが、支柱を突っ張る「角度」です。
最初は単純に考えました。突っ張るなら、床に対して真っすぐ垂直でしょう、と。
作りました。立てました。ぶら下がりました。
……怖い。
手前に倒れてきそうな感覚があって、とても怖くて、使い物になりませんでした。
支柱が垂直だと、実際の強度とは別に、使っている人が「これ、倒れてこないか?」という不安を感じてしまう。
強度計算上は問題なくても、人間の感覚が「無理」と言ってくる。
そこから角度を変えた試作を、何度も何度も繰り返しました。
そして最終的にたどり着いたのが、「85度」でした。
壁側へ、わずか5度傾ける。
たった5度です。
でも、この5度で「怖い」が「安心してぶら下がれる」に変わりました。
作り直した回数は、正直もう覚えていません。
ただ、製品をリリースしてからの改良だけを数えても、10回を超えています。
つまり、リリース前はもっと作っています。
今のKENSUIは、その積み重ねの上に立っています。85度で。
世に出したとき
完成したKENSUIは、クラウドファンディングで初めて世に出しました。
反応は、想像していた以上でした。
たくさんの応援の言葉をいただき、その後の一般販売でも、毎月、作れる台数の上限まで売り切れる状態が続きました。
売れた。嬉しい。
と、喜んでいる時間はありませんでした。
製品を作ることばかり考えていたので、検品や梱包をする倉庫を借りていなかったのです。
急いで、元は町工場だったと思われる倉庫を借りました。
そこで毎日、検品して、梱包して、出荷する。
朝から晩まで、ずっとそれに追われていました。
「作れば終わり」だと思っていた自分の甘さを、ここで初めて知りました。
自分が考えた製品を買ってもらえる。それは、もちろん嬉しかったです。
でも同じくらい嬉しかったのは、協力してくれた町工場の方々に、少しでも仕事として返せたことでした。
「デッサンしかない人」を相手にしてくれた工場に、ちゃんと製造の仕事が続いていく。
それは、自分にとって大きな意味がありました。
「kaku」の由来
現在のモデル名は「KENSUI kaku」です。
この「kaku」には、2つの意味があります。
ひとつは、「角」。
初期のKENSUIは丸パイプで作っていましたが、リニューアルの際に角パイプへ変更しました。
構造や強度、見た目まで、もう一度考え直した結果です。
もうひとつは「核」。
KENSUIを、使ってくれる人の運動習慣の「核」にしたい。
部屋の片隅にあって、毎日少しだけぶら下がる。
懸垂をする日もあれば、ストレッチに使うだけの日もある。
そんな日々の積み重ねの中心にいる製品でありたい。
そういう意味を込めて、「kaku」と名付けました。
再考築は、失敗の数
「再考築」と言うと、頭の中で考え直すことのように聞こえるかもしれません。
でも私にとっては、少し違います。
考える。作る。試す。
その繰り返しの回数こそが、「再考築」だと思っています。
KENSUIは、私が図面すら描けないところから始まりました。
何十社もの町工場に断られ、垂直に立てて怖がり、何度も試作を作り直し、少しずつ今の形になっていった製品です。
完成形を最初から思いついたわけではありません。
失敗するたびに考え直してきた結果が、今のKENSUIです。
次回以降も、こうした製品づくりの裏側について書いていきたいと思います。
TEDDY WORKS
代表 オグマ